2022 Sep. Lorraine
生産者訪問レポート
2022年9月 フランス・ロレーヌ地方
Du Vin aux Liens ドゥ・ヴァン・オー・リアン (Vanessa Letort ヴァネッサ・ルトール)
ヴァネッサの醸造施設は現在アルザスのベブレンハイムにありますが、彼女の畑はアルザスの隣のロレーヌ地方にあります。
9 月に入って収穫が始まったという知らせを受け、訪ねることにしました。
まず向かったのはロレーヌの中心都市であるナンシー郊外にある、彼女の自宅です。そこでしばらく話をした後、彼女の車で畑に向かいました。
彼女の畑はナンシーの西 25km にあるトゥール Toul の街を挟んで 2か所にまたがり、合計 4.5ha の広さがあります。
最初にトゥールの南にあるビュリニーBulligny 村にある1ha の区画に案内されました。背後に森をひかえた緩やかな傾斜の畑で、小石が混ざる石灰土壌です。白のオーセロワとシャルドネ、赤のガメイとピノ・ノワールが植えらていました。
当日は収穫はお休みの日でしたが、すでに 3 分の1ほどの葡萄が収穫されていました。まだ収穫されていない葡萄の状態は大変良く、葡萄が豊かに実った房から葡萄の実をとって食べてみると完熟で糖度が十分で酸の具合もいいものばかりで、今年は豊作で質もいい年だということを実感しました。真夏は雨が降らずに心配だったのですが、収穫前になって雨に恵まれたのもよかったとヴァネッサは言っていました。
この後、トゥールの街で昼食をとり、今度は街の北にあるリュセイ Lucey 村にある 3.5ha の畑に向かいました。ここも森のを背景にした小高い丘の麓の斜面に広がる好立地の畑です。ここはガメイとピノ・ノワールの赤用ブドウが中心のやはり石灰土壌の区画です。ここの葡萄も質量ともに申し分ない状態でした。とくにガメイのバランスの良さが印象に残りワインが出来るのが楽しみです。
彼女は畑の作業としてはビオロジックではありますが、厳密なビオディナミの手法を実践してはいませんが、醸造作業はかなりビオディナミを取り入れていて将来的には完全なビオディナミでやりたいと言っていました。
ロレーヌ地方はアルザスの隣にあり第 2 次大戦以前までは一大ワイン産地だったのですが、戦争で大被害を受けたために戦後多くの葡萄畑は再生されずに牧草地や果樹園に替えられてしまい、ワイン生産量はアルザスに比べてごく少量になっています。しかし、土壌のポテンシャルは高いものがあるので、最近は復活させる動きが出てきています。
訪ねてみて土壌と環境の良さを実感しました。ヴァネッサは翌週から収穫をまた続けると言っていましたが、来年彼女の自社畑のワインが出来るのを楽しみにして畑を後にしました。