ヴァイングート・ハルテネック

Weingut Harteneck

ヴァイングート・ハルテネック
シュリーンゲン,バーデン, ドイツ

ドイツの西南端、シュヴァルツバルトの山麓に小高い丘が広がる地方マルクグレフラーラントMarkgräflerlandは、西はフランス、南はスイスと国境を接しています。
年間の日照時間が2000時間に達するという、ドイツで最も温暖な土地と言われる気候は、ワイン造りにも適しています。ハルテネックさんの約10haの畑は、丘の斜面や頂上に広がっています。

トーマス・ハルテネックさんは、ドイツ・プファルツ地方のワイン農家に生まれました。家は兄弟が継いだので、スイスに移住してワイナリーで働いて経験を積み、20年ほど前にドイツに帰り、このシュリーンゲンに自分のワイナリーを設立しました。
設立当初からビオディナミ(バイオダイナミックス)農法で葡萄を栽培し、デメテルの認証も取得しました。以来、長くビオのワイナリーとしての評価を高めてきました。そして2016年から、一部のワインを亜硫酸無添加のヴァン・ナチュールのスタイルに転換しました。

2019年3月にケルンの試飲会でハルテネックさんに初めてお会いし、ワインを試飲して、インスピレーションを感じました。そして翌4月、すぐにワイナリーを訪ねました。

畑は、どこも土が柔らかく、様々な花やハーブ類が自生しています。土中には微生物が生き生きと息づいていて、葡萄の根も地中深く伸びているので、丘の頂上の表土に水分が少ない所でも葡萄樹はいきいきとしています。
ハルテネックさんは畝の間の植生を3,4年おきに耕作して転換しています。そうすることで土中の微生物、特に酵母の働きを活性化させて亜硫酸無添加のヴァン・ナチュールの醸造ができる環境を整えているということです。

土壌は、ミネラル豊富なレスLössと呼ばれる黄土や粘土と砂等が入り混じったローム層が表面を覆っていて、地中には石灰質の岩がある所が点在しています。特に石灰土壌はジュラ紀のものが多く特徴的です。ハルテネックさんはその土壌からできるワインにJurakalkジュラカルクという名をつけているほどです。

ハルテネックさんのワインの品種構成は土地柄を反映して、ドイツではグートエーデルと言われるシャスラ、オーセロワ、そして、ピノ・グリ、ピノ・ノワール等南系で、ドイツの代表品種のリースリングは気候が温暖過ぎて退屈な味わいのものにしかならないので植えていません。

彼のワインの印象は、ミネラル感の長く深い持続、とでも表現したいものです。これは、長年ビオディナミで造ってきた、畑と葡萄樹から来るものではないかと思います。ミネラルの伸び、アフターテイストの綺麗さ、長さは抜群で、ここにハルテネックさんの畑での努力が実っていると感じます。