ドメーヌ・シルヴァン・ボック
Domaine Sylvain Bock
ドメーヌ・シルヴァン・ボック
バルビニエール,アルデシュ,フランス
私がシルヴァンに初めて会ったのは、2013年、ロワールのアンジュで開かれた、若手の造り手のサロン「アノニマス」を訪ねたときでした。
彼の風貌は、ワインの造り手というよりは、何かのアーティストかミュージシャンのような感じで、物静かで知的な話し方をする人だという印象を持ちました。試飲したワインは、繊細な味わいが特徴の、印象深いものでした。
しかし彼のワインはいつも品薄で、欲しいなと思うキュベはいつも売り切れ。その後も南仏マルセイユのサロン「ラ・ルミーズ」や、またアンジュでも、彼と彼のワインに再会する度に、仕入れたいと思うのですが、タイミングが合わないことが続いていました。
そして2015年の3月、ケルンで開かれたドイツ初のヴァンナチュールのサロンで、シルヴァンに再会した時に、やっと彼の秀逸なシャルドネを手に入れることができたのでした。今まで英語で話していたのですが、彼はドイツのフライブルク大学に留学していたことがあり、ドイツ語が堪能なこともわかり、話が弾みました。彼は風貌だけではなく、彼のワインの繊細さは芸術的なセンスからくるものではないかと、彼と話していて思いました。
ローヌ川の流域から西に山をいくつか超えていった、桃源郷のような地に、アルデシュのワイン産地が広がります。ここにはシルヴァンを始め、私達にはお馴染みのレ・ヴィニョーやドゥー・テールなど、たくさんの素晴らしいヴァンナチュールの生産者がいます。
この地で初めてSO2を使用しない「ヴァンナチュール」を造り始めたのは、マゼルのジェラルド・ウスリックです。その彼が、自分の後継者として太鼓判を押しているのが シルヴァンなのです。
シルヴァンは教師の家庭に生まれ、家のテーブルにはいつもワインが置かれていたので、徐々にワインに興味を抱き始めました。コート・ロティで収穫を体験して以来、ワイン熱がとりつき、レストランで働く友人から、シャーヴやメメといった素晴らしいボトルを飲ませてもらっていました。ある時、収穫を手伝っているときに飲ませてもらったマゼルのワインが、こんなにぶどうの味がするのに、なぜ他のワインはしないのか、その違いに衝撃を受け、自然派ワインの虜になりました。
その後、マコンで本格的にぶどう栽培とワイン醸造について履修し、2年間マゼルで働いた後、農業学校の栽培醸造責任者となります。しかし除草剤や農薬の使用に耐えられなくなり、再びマゼルの門を叩きます。
そしてついに2010年、マゼルの畑の一部を譲り受け、兼ねてから念願だった、自分自身のワイン造りを始めたのでした。