Jean Pierre Frick

ジャン・ピエール・フリック

Domaine Pierre Frick

ドメーヌ・ピエール・フリック

ファッフェンハイム,アルザス

アルザス・コルマールの南ファッフェンハイム村に本拠を置くフリックは、ヴァンナチュールの先駆者の1人と言われます。

現当主ジャン・ピエールは1970年代初頭から有機農法を実践、1981年には「地球上の生物として誠実なあり方を考えた」結果として、ビオディナミ農法に移行しました。
シュタイナーの提唱を忠実に再現して手摘みで収穫したブドウの、房全体を圧縮。沸騰による果汁凝縮や浦糖もしません。発酵は自然界の酵母にゆだね、発酵温度の調節もしません。酸も調整せず、澱とともに、フードルという古いオーク樽で熟成。ワインは瓶詰前に一度だけ軽く濾過されます。この、ジャン・ピエール自らのライフスタイルに基づいて造られた、地球の恵みのワインは、身体にも優しいワインとして、市場に送り続けられています、アルザス特有のピノ・ブラン、ピノ・グリ、リースリング、ゲヴュルツトラミナーといった品種の特性を、素直に表現する味わいが特徴です。

フリックのドメーヌを初めて訪ねたのは、シュレールやビネール、パトリック・メイエーよりもずっと後の、2007年ごろでした。彼のドメーヌで少し待っていると、畑から戻ってきたジャン・ピエールが迎えてくれました。やはり、「畑の人」なんだなあと感じました。
話し始めると、ドイツ語がとても上手なのです。ブルーノやクリスティアンも上手なのですが、彼らはアルザス方言とフランス語の訛りが時々混ざります。それもアルザス人らしい情緒があっていいなあと思っています。一方、ジャン-ピエールは、訛りなしの標準ドイツ語で理路整然と話します。一方で、時々、彼がお母様と話す場面に出会うが、私と話すときのドイツ語ともフランス語とも違う言葉で二人は話す。時々、ドイツ語の単語とわかる言葉が混じるのでアルザス方言のドイツ語、所謂アルザス語なんだと気づく。何とも言えない温かみのある会話であり、やはり彼らはアルザス人なんだと納得する。アルザスの田舎ではまだこのようなアルザス語を年配の人が話しているのが聞こえることがある。そんな時にアルザスの文化の豊かさを感じる。

ジャン‐ピエール・フリックは、1980年代からビオディナミ農法を実践してきた、アルザスにおけるパイオニアです。
この農法の発案者はオーストリア出身の思想家ルドルフ・シュタイナーで、日本ではシュタイナー教育の創始者として有名です。ジャン-ピエールも彼の子供たちをシュタイナー学校に通わせていました。ある時、息子さんの話になって、そろそろ卒業が近くなった彼が突然鍛冶屋になりたいと言い出して困っているとジャン-ピエールに打ち明けられたことがあります。その後の経緯はわかりませんが、ある時ドメーヌを訪ねると、ワイン造りの手伝いを始めた息子さんを嬉しそうに紹介してくれました。

ジャン-ピエールを訪ねると、いつも何十種類もあるワインを試飲しながら、ワインについてかなり深い話が出来ます。ある時、同じミレジムの同じ畑のワインで、少量ながらSO2が入ったものと全く無添加のものを、ブラインドで出されたことがあります。しかも、10年以上たったものでした。結果は、果実味とミネラルがより充溢している方が無添加のものでした。ジャン-ピエールは、なぜそうなるのかはわからないと言っていましたが、SO2がワインにどう作用するかを実地で体験した出来事でした。彼はその頃から、SO2無添加のワインをどんどん増やし始めていました。

ジャン-ピエールは、素朴であまり強烈な自己主張はないがしっかりした造りで、ミネラルや葡萄の旨みを十分に引き出した、しんみり美味しいと感じるワインを、常に造り続けています。