Christian Binner

クリスティアン・ビネール

Domaine Christian Binner

ドメーヌ・クリスティアン・ビネール

アメルシュヴィール,アルザス

ビネール家は、コルマールのすぐ北西にある Ammerschwihr(アメルシュヴィール)村で、1770年からワイン造りを行っている、名門です。

現在の地で本格的なワイナリーとして誕生する以前、つまり1770年より前も、ビネール家はライン河下流でワイン農家を営んでいました。言当主クリスティアンの祖父ウジェーヌは、村にあって、樽でなくボトル詰めのワインの販売をはじめた先駆者でした。父ジョセフは、現在のように自然派が注目される以前、手間のかからない新農法として化学物質があがめられていた時代にあっても、それらを一貫して扱わず、ブドウやワインに対して労力を惜しまない、という考え方の持ち主でした。その甲斐があって、畑にも、カーヴ、そしてそこに眠って時を待つワインの中にも、優れた働きをしてくれる微生物たちが常に存在し、現在のビオロジックに至っています。

代々受け継がれた畑は現在6ha。その7割が丘の斜面にあり、もちろんその中にはケーファーコップがあります。
彼らが持っている畑の中でも特にすぐれた区画がケーファーコップKaefferkopf(フランス語読みではケフェルコフ)です。ケーファーとはドイツ語でテントウムシなどの甲虫のことで、Kopfコップフは頭を意味します。村の東にあるこの区画は下の写真のようにまさに虫の頭のような格好をした丘の斜面にあります。南東向きの斜面は日当たりがよく夏の日照時間も長く、ブドウには理想的です。また、バリエーションに富む恵まれた地質で、表層は砂利状の砂岩質であっても、その下にある黄土の石灰岩の層によってしっかりとした土壌のバランスが保たれています。この石灰質が生命力みなぎる豊かな味わいを、そして酸性の砂岩質が洗練されたエレガントな味わいをワインに与えます。
 14世紀にはZim Kaefersberg(甲虫の山)の名で記録に登場し、もっとも古いKaefferkopfのラベルには1834年の年号がはいっており、1866年になると「アルザスの優れたワイン」と明示したラベルも見られます。しかし、これだけの歴史と名誉ある畑であるにもかかわらず、所属する村やその所有者の問題により、長らくグランクリュ(特級畑)となることができませんでした。2007年、ビネール家等の努力が認められ、ついにKaefferkopfは51番目のアルザスグランクリュとなりました。

ドメーヌは、まったくの家族経営。現当主であるクリスティアンを筆頭に、両親、妻、姉のベアトリスも加わり、全員でまかなっています。

この間、6月のある週末にビネールの当主クリスティアンの40歳の誕生日と彼らの新しい醸造施設の落成記念を兼ねたパーティーに招待されて、アルザスはアメルシュヴィール村まで行ってきました。当日は秘蔵の90年代初めの古いビンテージの古酒も試飲させてもらったのですが、改めて酸化防止剤をほとんど使わない造りのワインが何十年も熟成しうることを再認識しました。

ビネール醸造所と背後のケーファーコップの丘
誕生日と醸造所落成のパーティー
 

ドメーヌ・クリスティアン・ビネールの現当主クリスティアンのことをすこし書いておきます。
彼との付き合いは2005,6年頃、ヴァン・ナチュールを追いかけてアルザスに行くようなった時からです。
ブルーノ・シュレールやジュリアン・メイエーのパトリックたちのところに行くときには、ビネールにもよって、クリスティアンと話したりするようになりました。仕事で取引をするようになると、事務的な打ち合わせは事務所を取り仕切っている彼の姉のベアトリスとし、クリスティアンとは様々なサロンで試飲しながらワインのことを話すようになりました。ドイツ語が達者な彼は、ベルリンのRAW、ケルンのWeinsalon Naturelなどドイツのサロンにもよく来てくれます。

彼はとっても人懐こい性格で、酔っぱらうとより陽気になります。
ある時、ドメーヌを訪ねると、何年もかけて工事をしていたカーブの地下の壁の石組が完成し、ちょうど彼はそのお祝いに、石組みの職人さんたちと一緒に飲んでいました。僕も仲間に入れてくれ、もう上機嫌なクリスティアンは、どんどんワインを開け、楽しい時間を共に過ごしました。この新しいカーブは、上記の新醸造所の落成パーティーで完成を祝った施設ですが、地元の木材、天然石を使って曲線を活かした設計の建物で、彼が取り組むビオディナミ農法の生みの親であるルドルフ・シュタイナーがスイスに建てた、ゲーテアーヌムという建物をモデルとしています。ここに彼のこだわりを見た気がしました。ビオディナミは大地と宇宙の波動に従った農業です。クリスティアンのワインのピュアーな性格はここから来るのだと思います。

新しいビネール醸造所

クリスティアンの周りには自然に人が集まり、つながっていきます。
ある時、アルザスの生産者訪問をしていて、ランチの時間に行きつけのコルマールのエリックさんのお店「セザンヌ」にいくと、クリスティアンが大勢と食事をしているところでした。ちょうどその後ビネールに行く予定だったが、まあ、一緒にやろうと彼らのテーブルに招かれました。一緒にいたのは同じ村のフレデリック・ゲシックト、それから、なんとイタリアはガンべッラーラのラ・ビアンカーラ醸造のフランシスコ・マウレ、彼らのところには以前訪問したことがあります。それに、カナダのケベックからの研修生たち。クリスティアンはいつも多くの研修生を受け入れています。ヴァン・ナチュール好きが聞いたら垂涎物の、ビネールはじめゲシックト、ビアンカーラのワインがたくさん持ち込まれている中で食事をしながら、わいわい楽しい時間を過ごしました。

ビネールのワインを飲むときは、このようなクリスティアンとの楽しい思い出が浮かんできます。